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セッションズ ◆ The Sessions [いんぷれっしょん]

セッションズ.jpg 映画通を唸らせる、先見性に溢れた作品を次々送り出す、FOXサーチライトピクチャーズ。創立20周年を飾る作品として製作リリースされたそうだ。大手資本の傘下にありながら、所謂ハリウッド的ではない、どちらかというと、インディーズの香りさえする作品群に魅了されているファンも多いことだろう。私もその一人だ。

 本作も、非常にレアなテーマにフォーカスしている。障がい者の「性」。主人公自信の著書を下敷きに作られたとのことだが、いや~目の付け所がスゴイ!幼くしてポリオを患い、首から下の筋力を失った、詩人でジャーナリストの中年男マーク・オブライエンが、自らと同じ障がい者の性をテーマにした記事依頼を受けたことと、自信の失恋をきっかけにして、男として名実共に一人前となるため童貞喪失に挑むというストーリー。その手助けをしてくれるのが、美しきセックスサロゲート(という職業が存在するのですね~オドロキ)シェリル。この二人の数回にわたる「セッション」、性の実地レッスン描写をメインに、主人公の成長と葛藤が綴られるというものだ。

 身障者の性については、マスメディアや専門家の書物などで希に取り上げられているのを眼にすることがある。 興味本位で覗いてみたら、その実態に驚かされることもあるだろう。だが、少し想像力を働かせてみれば、生物学的な根本欲求のひとつであるところの「生殖」は、呼吸、食、睡眠などと同じレベルな訳で、成人となった人には必須の問題なのはすぐに理解できるはずだ。そういった観点からも、この作品がつくられ、多くの人々に気づきを与えてくれたことも、それなりに義深いと言えるのではないだろうか。

 とはいえ、障がいを持つ人および性という、ともすれば一般社会に於いて、決して常に陽の当る場所に置かれているとは思えないことがらを繋げて、ともすれば、ウエットになりがちなテーマを、非常にユーモラス且つ抜群のセンスで、からりと明るくポジティブに描いているところは、ナイスと言うしかない。 作品全体に漂うそんな雰囲気は、主人公マークのキャラクターに負うところが大なのは勿論だが、脇を固める友人やヘルパー達の人物像も、非常に魅力的に描かれ、作品全体に暖かみをプラスしている。マークが恋心を抱いた美貌のヘルパーアマンダ。その次にやってきた中国系女性ヴェラ。どちらの個性も好ましいキャラとして非常に立っているが、一番楽しませてくれるのが、ブレンダン神父。堅苦しいイメージがつきまとう聖職者らしからぬ、非常に人間味溢れる人物として描かれ、逐次相談及び報告されるマークのセックスセッションについての受け答えで、その目に見せる狼狽ぶりなどは、ほぼ爆笑ものである。

 こうして、冷静ぶった感想など述べてみたりはしたが、やはりそこはおっさんウォッチャー。本音を申せば、サロゲートシェリルがマークの元にやってきて、簡単なレクチャーのあとすぐに始まった実地レッスンで、いきなり美しき全裸をご披露くださり、性技の「いろは」を始めたのには、「お!」「ふむふむ」「実によろしいですな~」などと、心の中でにやついていたのも事実。所謂、風俗嬢のそれとは全く違う、ムードなどかけらもない実技は決してポルノチックではないのだが、美しきアラフィフ熟女演じる「床」演技には、少なからずコーフンしてしまうのも致し方ないとお許し願うしない。

 マーク・オブライエン無事男になれたのか?当初6回と想定されていたセッションが、2回を残して打ち切られるのは何故か。マークが何を得られて得られなかったものは何か?終盤にやってくる大人のドラマもしみじみ良い。そしてエンドシークエンスを見終えた後には、心に暖かい風が吹き込むような、心地よい余韻を味わうことが出来ること請け合いだ。特に、最後に登場する、不思議な縁で繋がった二人の女性が、眼差しで交わす大人のやりとり、素敵過ぎです。

2014/2/13 シネマジャック&ベティにて

 


本作の主な登場役者過去の出演作 それぞれ助演していますね。

 

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ザ・イースト ◆ THE EAST [いんぷれっしょん]

THE EAST.jpg ゴールドマンサックス出身の才媛、ブリット・マーリングが主役を努め、製作にも携わっていると言う新作。同じシチュエーションには名作の声多数の「アナザー・プラネット」。制作も同じFOXサーチライトピクチャーズ 期待せずにはいられない。おまけに、同社の設立20周年を記念してリリースされたとくれば、なおである。

 社会派サスペンスとでもカテゴライズされさそうなテイストだ。私自身、最も大好物のジャンルである。タイトルの「ザ、イースト」とは、環境テロリスト集団。企業利益のために、環境破壊や薬害など社会の為にならない行動を取る大企業に対して、制裁を加えるのを目的に活動する、言わば義賊団体。 一方主人公は、そういった輩を排除したい企業に依頼され、被害を食い止めるためのコンサルティング企業で、エージェントとして働く。組織に潜入し、その活動を内部からスパイしたり、工作を未然に阻止するのが使命だ。(ホントは、”ずぃ・いーすと”と発音すべきなのは、中学英語で習いましたね)

 企業は誰のものかという、シンプルでありながら簡単には語れない理屈。企業規模が大きくなれば、多くのステークホルダーが存在する。その中で、古典的ではあるが、最も解りやすいのが、一義的には出資者である株主のものという考え方ではなかろうか。企業とは、出資者である株主の利益最大化を目的に活動するもの。要するに、生み出された利益の仲から配分を受けることができれば出資者は喜び、その功績に対して経営者は巨額の報酬を手にすることが出来る。それ以上でもそれ以下でのないという考え方も確かに正論。その課程で社会貢献や、社員の福祉向上などを実現すれば、ブランド力は高まり尊敬される存在となり、企業としての付加価値は増す。株価も当然上がるだろう。しかし、逆のパターンで、金儲けのため、外部から見えないところで社会に害を及ぼしているとしたら。また、それを金や政治の力で隠蔽していることを知ってしまったら、市民としてはどう行動すべきかという視点で描かれるのが本作なのだ。

 物語のトーンはサスペンスタッチで進行する。最近はあまり目にしなくなったスパイスリラーのような緊張感が良い。 主人公サラが 工作のあげく見事潜入した組織は、非常な不気味さを醸す。古びた廃屋のようなアジトでの共同生活風景。あたかもカルト教団のごとき様相だ。その中で、メンバーの目を盗み内偵する主人公を、人と同じ目線で追うカメラはぴりぴり緊迫。仲間として受け入れられるのか? 異分子として扱われるか、はたまた正体がばれるときがくるのか? それが間もなく試されるときがくる。潜入した最初の晩餐シーン。拘束衣を着せられ、両手の自由を失ったまま食べ物を口にせよと命ぜられる。当然困惑するサラ。自分なりに答えを見つけたあと、メンバー達が見せる別の答えには、観客もあっと驚かされるだろう。組織のメンバーが共有する価値観が、シンプル且つ鮮烈に見えた瞬間だ。プライドを粉々にされたエリート女捜査官の、いらだちととまどいが見事に凝縮され、かなり見応えがあった。

 都会的で上昇志向、任務に忠実だったサラの心が動くターニングポイント、製薬会社襲撃計画を知って上司に報告。予想と異なる意外な返答。そしてその帰りにメンバーの一人、薬害に苦しむドクの身の上話を聞いてからだろう。犯罪集団かテロリストだと思っていた連中が、実はまったく違うということを知ったときに、大きなジレンマに苛まれる。ポスターのキャッチコピーにも書かれている、相容れない価値観の板挟み、理想と現実の狭間での立ち往生状態は、普通に生きている大人なら一度や二度は経験があるだろうから、非常に受け入れられやすい設定だ。観客の側から見れば、当初不気味に見えた組織の実態も、メンバーの個性や活動の細部まで目にして、その根底にある倫理感を知り、既に彼らの行動にある程度の理解と共感をもっているだろうから、サラが何時どの段階で変節し、「寝返る」かというところに興味が集中するわけだが、果たして・・。

 聡明な主人公が、最終的にどう決断し行動したかというのは、エンドロールに断片的に見るスチル写真から解るようになっていて、そこから見える制作者の主張は明かである。悪質ないたずら程度から、企業幹部の人命を脅かすかも知れない破壊的工作まで、組織の活動は幅広いが、それを是とするかで評価が分かれるかもしれない。しかし数年前、ウィキリークスによって暴露されメディアを騒がせた、大企業による環境活動家への関与の事実と照らし合わせてみれば、この作品の構図はかなり事実に近いものだということは想像に難くない。先進国においては、超大企業と政府が一体化、特にアメリカにおいてはFBIが私企業の利益のために動くことがあり、そのせいで、「ザ・イースト」のような団体への締め付けが厳しくなりつつあると言われているとか。それが何を意味するのか? もはやSF中の想像の産物でなく、進行しつつ事実の延長上にあるのだという警告として受け止めるべきだろう。思考を止め、大きな潮流に身を任せて生きていくことは楽であるが、その先にどんな未来があるのかを、時に考えてみる必要もありそうだ。

余談:この作品はL.A.Times紙の読者が選ぶ“2013年度 最も過小評価された映画”ランキングの1位に選出されているとのことです。

2014/2/6  TOHOシネマズららぽーと横浜にて


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