冷たい雨に撃て、約束の銃弾を ◆報仇 [いんぷれっしょん]
あなたが男臭いハードボイルド作品を好きなら、是非本作を見るべきだ。香港ノワールの旗手ジョニー・トーが描き出す、裏社会に生きるアウトロー達の鮮烈な生き方は、普段は眠っているかも知れない心の奥にある熱いものを刺激するだろう。
この作品を見た後に書く感想文は、その書き出しさえもこんな調子になる。 ある意味「確立された様式美」とも言える独特の世界観は、共感できる者には、ぞくぞくするような恍惚感にさえ浸ることができる。 とにかくかっこいい男の世界・・なのだ。
マカオに住む会計士一家が銃撃され母親だけが瀕死で生き残る。フランス人で彼女の父親コステロは病床の娘に復讐を誓う。 滞在中のホテルで、偶然、仕事中の3人組の殺し屋と出会った彼は、全財産をはたいて彼らに仕事を依頼し、犯人捜しが始まる。 しかし、依頼者コステロは、過去に負った傷から来る記憶障害を抱えていた。
過去にガンマンだった殺人依頼人と現役の殺し屋、言葉ではなく銃を通して会話するような男達。殺しの現場であるホテルの廊下、主役達が初めて出会うシーン、無言で計るお互いの「間」を描ききることで、作り手の意図した人物配置がぴたっとはまってくる。
犯人捜しの過程において披露されるいくつかのエピソードから、次第に深まり行く友情にも似た結びつが描かれる。 娘の殺害現場の家で、シェフ「コステロ」によって饗された食事、そこで始まる腕試しによって、次第に互いの腕を確認する。 また、武器調達の後、ゴミ捨て場で旧い自転車を標的にし銃を撃ち合う場面、スゴ腕の男達によって発射された銃弾に弾かれた自転車は、意思を持ったように一人で走り続ける。ほとんどセリフのないシーンで、互いに認め合う男達の心情が見事に描かれる。「レ・フレール」。
やがて、コステロの症状が悪化し、殺人依頼者がその理由さえも失ってしまう。 意味をなさなくなった復讐劇という設定を織り込むことで、「敵討ち」という古典的なテーマに深みが加わった。金で雇われただけのはずの殺し屋達が、打算を超えた「男気?」で、依頼を全うしようとする。そこに流れるのは中国人社会独特の価値観だろうか。クール且つ熱い展開には、感動さえ覚える。
暗殺者が明らかになり、追い詰めるにつれ、ガンアクションシーンがメインになる。月夜の森を舞台に、交互に展開する青白い月光と闇、モノトーンのコントラストに浮き上がる極彩色のエアロビーと、ガンマン達のせめぎ合い。雨の香港市街旧いアパートを舞台にしたチェイスと、コステロの前に突然現われる傘の群れ、バイオレンスと映像美へのこだわりが集約された見事なシーンだ。 そして、西部劇でおなじみ、荒野での決闘を彷彿とさせる、強風吹き荒れるゴミ処分場で、再生紙の圧縮キューブを使っての銃撃戦。 絶体絶命の中で見せる男達のニヒルで乾いた笑みには、痺れる。
娘の仇を特定することさえ困難になったコステロが、いかにして目的を果たすかというテーマを織り込んだ終盤は、いろいろなアイデアがちりばめられ、サプライズの連続だ。 「すべてを忘れてしまう男に復讐の意味があるのか」という問いかけに対する答えは、エンディングで見せるコステロの表情の余韻とともに、それぞれが持ち帰ることになるだろう。
2010/06/01 新宿武蔵野館にて
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こんにちは
傘の場面におけるコステロの
雨中でずぶぬれの子供の様に不安そうな面持ちと
それを発見した男たちの父親のような表情が
最高にぐっときました
物語的な欠点を横にどけてしまいたくなる
シーンの力が素晴らしい映画だと思います
というか単に監督のファンです
by いぬみち (2010-06-07 21:45)
souさんこんにちは。niceありがとうございました。
男臭い癖のある作品ですが、機会があればご覧になって損は無いと思います。
by たんたんたぬき (2010-06-08 13:05)
いぬみちさんこんにちは。
ご訪問&niceありがとうございました。
ビジュアルの美しさと、寡黙な男達が発する数少ない言葉にしびれますよね。
これからもよろしくお願いいたします。
by たんたんたぬき (2010-06-08 13:08)
こんばんは!
わたしのブログにお越し頂いてありがとうございます!
ジョニー・トー監督大好きで、この作品もこれまで以上に
パワーアップしていてとても良かったです。
様式美、そしてバラエティ溢れる銃撃戦のシーン・・・どれも
素晴らしいですね〜。
殺し屋達の最後の笑顔にはわたしも痺れました!
by トミュウ (2010-06-27 22:34)